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膵神経内分泌腫瘍
膵神経内分泌腫瘍とは
膵神経内分泌腫瘍は、膵臓にあるホルモンを産生する「神経内分泌細胞」から発生する腫瘍です。膵臓に発生する腫瘍全体の7-10%、日本人 10 万人当り 2‐3人に発症する特殊な種類の腫瘍で、ホルモンを作り出して分泌する能力を持っています。ホルモンは体の様々な働きを調整する大切な物質で、私たちの健康を保つために欠かせません。
この腫瘍には、大きく分けて2つのタイプがあります。1つ目は「高分化型神経内分泌腫瘍」と呼ばれるもので、腫瘍は正常細胞の形態に近く、比較的ゆっくりと成長しおとなしい性質を持っています。2つ目は「低分化型神経内分泌がん」で、こちらは正常細胞との形態が大きく違い腫瘍の進行や増殖が速く、より攻撃的な性質を持っています。
症状は腫瘍の種類によって大きく異なります。ホルモンを過剰に作り出す「機能性腫瘍」の場合、それぞれ特徴的な症状が現れます。一方で、ホルモンを産生しない「非機能性腫瘍」の場合は、特徴的な症状が出現しにくく、健康診断などで偶然見つかることや、腫瘍が大きくなって周りの臓器を圧迫することで気付かれることがあります。
診断は、いくつかの検査を組み合わせて行います。血液検査でホルモンの値を調べたり、CT検査やMRI検査などの画像検査、最近では、より詳しく調べられる核医学検査(オクトレオスキャン)という方法も用いられています。また、腫瘍組織を少し採取して顕微鏡で調べる検査(生検)も、確実な診断と腫瘍の性質を判断するために重要です。この病気の予後は、一般的な膵がんと比べると良好ですが、腫瘍の性質や進行度によって大きく異なります。
自己免疫性膵炎の治療
治療方法は、手術による腫瘍を含めた膵臓の切除が基本となります。腫瘍が小さく、転移していない場合であれば、腹腔鏡やロボットを用いて小さな傷で切除することもあります。腫瘍が大きく手術で取り切れない場合や多臓器に転移している場合には、薬剤による治療を行います。
最近の医学の進歩により、より詳しい検査方法や新しい治療薬の開発が進んでいます。また、腫瘍の性質をより正確に分類できるようになり、それぞれの患者さんに合わせた治療を選びやすくなってきました。複数の専門医によるチーム医療で、総合的に治療方針を決定することで患者さんの治療成績は着実に向上しています。
Q1神経内分泌腫瘍による症状にはどのようなものがありますか?
機能性腫瘍の中で代表的なものに「インスリノーマ」があります。これは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを過剰に作る腫瘍です。血糖値が急に下がることで、めまいや冷や汗、不安感といった症状が現れます。また、顔が赤くなる「顔面紅潮」や下痢を引き起こす「カルチノイド症候群」という状態を示す腫瘍もあります。
一方、非機能性腫瘍は、初期の段階では特に症状が出ないことが多いのが特徴です。腫瘍が大きくなると、お腹や背中の痛み、皮膚や目の白い部分が黄色くなる「黄疸」、疲れやすさといった症状が現れることがあります。
少数ではありますが、MEN1(多発性内分泌腫瘍症1型)という遺伝性の病気の一部として現れることもあります。
Q2膵神経内分泌腫瘍に対して手術以外の治療法はどのようなものがありますか?
膵神経内分泌腫瘍に対し手術以外にも、さまざまな治療選択肢があります。
1. ホルモン療法(ソマトスタチンアナログ療法)
体内のホルモンバランスを整える薬物治療です。ランレオチドという薬を使用して、過剰なホルモンの分泌を抑え、腫瘍の成長を遅らせることができます。
2. 分子標的薬による治療
腫瘍細胞の増殖に関わる特定の分子に焦点を当てた治療法です。エベロリムスやスニチニブという薬が使われ、腫瘍の進行を抑制する効果が確認されています。
3. 化学療法
抗がん剤を使用する治療法です。ストレプトゾシンなどの薬を中心とした治療が行われます。特に、増殖の速い腫瘍や、他の治療が効きにくい場合に選択されます。
4. 放射性核種療法(PRRT)
体の中から放射線で腫瘍を治療する方法です。ルテチウム-177という放射性物質を使用し、腫瘍に直接働きかけます。近年、新しい治療選択肢として注目されています。
5. 肝臓転移に対する治療
肝臓に腫瘍が広がった場合の治療法として、以下のような方法があります
- ・肝動脈塞栓術:腫瘍に栄養を送る血管を詰める治療
- ・ラジオ波焼灼療法:高周波の熱で腫瘍を焼く治療